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ルネサンスが取り組む「地域活性化起業人」とは？
ルネサンスでは、2021年度から地方自治体や学校、外部の企業などへ一定の期間、社員を派遣する「事業開発型社外留学制度」を導入しました。制度導入の背景にあるのは、国の「地域活性化起業人」（2020年度までは「地域おこし企業人」）というプログラムを活用して実施してきた、社外に自社の人材を派遣する取り組みです。
地域活性化起業人という取り組みは、地域の健康づくりに対し、どのような成果をもたらしたのでしょうか。また、事業開発型社外留学制度によって期待される、自社内の効果とは何なのでしょう。
2017年から約3年間、地域活性化起業人として鳥取県伯耆（ほうき）町で実際に活動し、現在は地域健康推進部において地域活性化起業人への取り組みを統括している、矢野傑（やの すぐる）に話を聞きました。
鳥取県伯耆町でスポーツクラブの開業と運営をサポート
地域活性化起業人とは、三大都市圏に所在する企業の社員を、一定期間地方自治体に派遣し、地域活性化に対応していく制度です。派遣された社員は、企業で培ったノウハウや知見を活かし、地域独自の魅力や価値を向上させるべく、さまざまな業務に従事します。地方圏への人の流れを創り出すことが期待されており、国は取り組みに対して必要な支援を行います。
矢野は、この地域活性化起業人として、鳥取県伯耆町の皆さんの健康づくりに携わりました。
「伯耆町は鳥取県西部に位置する、人口約1万人の町です。派遣のきっかけは、伯耆町が町の保健福祉センターにある遊休スペースを活用して、ジムとスタジオを備えた会員制のスポーツクラブを開設することになり、その事業にルネサンスが関わったことです。施設を造っただけでは、地域活性化や、町民の方々の健康づくりにはつながりません。そこで、私が地域活性化起業人として町に入り、ルネサンスが持つノウハウを活かして、スポーツクラブの開業と運営のサポートを行いました」
ルネサンスのノウハウを活かし、地域のニーズに合わせてサービスを提供
事前の打ち合わせなどを経て、矢野が伯耆町に入ったのは2017年1月のことで、その3ヵ月後には施設のオープンが決まっていました。「限られた時間の中で、頭も体もフル回転でしたね」と、矢野は当時を振り返ります。
「提供するサービスの柱は、マシンジムとスタジオプログラムの2つ。既存のスポーツクラブの運営をベースに、若い方から高齢の方まで取り組めるようなサービスを提供しました。例えば、筋トレやランニングのマシンに加えて、介護予防にも活用できるマシンを設置し、スタジオでは、ヨガやトランポリン、格闘技系のプログラムのほか、青竹ビクスという運動初心者や高齢者にも取り組みやすいプログラムを導入しました。それまで、スポーツクラブを利用したことのない方でも、強度の低い運動から無理なく楽しめるプログラム構成を考えていったんです。
同時に注力したのが、人材の育成です。伯耆町における地域活性化起業人の取り組みには、施設の活用と町民の健康増進のほか、雇用の創出という大きな目的がありました。町の施設を活用してスポーツクラブを造り、多くの人々の健康に役立つプログラムを提供し、現地の方を採用してトレーナー育成や接客接遇研修を行い、開設後のスムーズな運営へとつなげていきました」
とはいえ、伯耆町はルネサンスの店舗がまだ存在せず、矢野自身も初めて訪れた場所。取り組みを進める上で、戸惑いを感じる場面もあったようです。
「ルネサンス在社時と比べて一番ギャップを感じたのは、行政の事業の進め方についてです。民間では、お客様や自社の利益を考え、スピード感を重視します。しかし、大切な税金を使って事業を進める自治体の場合、早さを優先するわけにはいきません。事業を進めるためには、関係者の方々にしっかりと説明を重ね、納得・共感してもらうことが大切なのだと学びました」
スポーツクラブを拠点に町全体を巻き込んだ健康づくりを目指す
こうして、2017年4月、伯耆町に「フィットネス＆スタジオ パル」がオープンしました。運営を担うのは、社会福祉法人伯耆町社会福祉協議会です。ルネサンスのノウハウを活用したプログラムやサービスは、地域の皆さんにとても好評で、年間利用者数は、延べ3万人以上になり、町の人口の約3倍にも上りました。
「利用者の皆さんからは『運動をするようになって体が変わった』『気持ちが明るく前向きになった』という声を多数いただきました。オープンまで大変なこともありましたが、地域の皆さんの笑顔が見られて、これまでの苦労も報われたような気がします。育成したスタッフも、達成感を味わってくれていると思うと、喜びもひとしおです」
町の人々に身近な場所として利用してもらうため、施設の中央には天然芝の広場を設置。子供向けのダンススクールや体操教室、親子向けのイベントなども開催しているそうです。
「多くの方にスポーツクラブに足を運んでいただくことも大切ですが、会員以外の方の健康な体づくりにも貢献するには、いったいどうすればいいのだろうと考え、町全体に向けた取り組みにも積極的に乗り出しました。公民館で運動指導を行うことや、町のケーブルテレビの番組で運動コーナーを持たせていただくこともありました」
地域の好評の声を受け、2つ目の施設もオープン
「フィットネス＆スタジオ パル」の成功を受け、2019年9月には、伯耆町に2つ目の施設「みぞぐちテラソ」がオープンしました。旧町役場の空きスペースを活用した施設で、「フィットネス＆スタジオ パル」と同様に伯耆町社会福祉協議会が運営を担っています。
「『みぞくちテラソ』が開設されたのは、伯耆町の中でも高齢化率の高いエリアです。そのため、健康づくりとともに、高齢者の就労やコミュニティ形成を促す施設を目指しました。ストレッチやトレーニングができるマシンを設置したフィットネスジムだけでなく、高齢者の方が簡単な内職作業で収入を得られるワーキングスペース（ワーク会員限定）や、誰でも気軽に立ち寄れるセルフカフェ、そしてカラオケセットも設置したんです。地域の皆さんには、スポーツをするだけでなく、交流の場としても活用してもらえるようになりました」
社外での経験が新たな健康ソリューションの創出につながる
地域活性化起業人の活動を終えた矢野は、現在、ルネサンスの地域健康推進部に所属し、全国の自治体や地域の健康づくりを支援しています。伯耆町で得た経験は現在の業務に対し、どのように役立っているのでしょうか。
従来のスポーツクラブの事業は、クラブに来ていただいた方のニーズに応えるサービスを提供することが主体でした。しかし近年、従来型のサービスだけでは、多様化する社会課題に対応することができなくなっています。スポーツクラブという拠点がない場所でも、多くの方を健康に導くという社会的な課題に対し、ルネサンスがこれまで培ってきたプログラムやイベント、人材育成のノウハウが存分に活かせると考えています。
伯耆町で約3年間、地域に根差して活動してきたことで、自治体が抱える悩みや困り事などを肌で感じることができました。地域の健康づくりのためにゼロから取り組みを進める上で、地域活性化起業人としての経験が大いに役立っています」
ルネサンスが展開する事業開発型社外留学制度とは？
ルネサンスでは、2021年度に事業開発型社外留学制度を導入しました。今回ご紹介した自治体の事例だけでなく、企業や学校などにも社員を派遣し、健康づくりや接客サービスのノウハウを提供するものです。この制度は、社外留学を通じて新しい経験や知識を習得した社員が、新たな事業を開発できるようになることを目的としています。
「例えば、自治体に留学した社員が帰ってきたら、かゆいところに手が届くような、より地域に喜んでもらえるクラブを作ることができるでしょう。また、留学先で得た知見を活かして、別の企業や自治体に、より良いサービスを提案することも可能になるはずです。
また、社外での活動は、社員一人ひとりを格段に成長させます。私自身も、どうすれば伯耆町の健康づくりに貢献できるか、どうすれば多くの人に喜んでもらえるかを必死に考えたことが、自分の成長につながったと実感しています。事業開発型社外留学制度をはじめとした社外への人材派遣は、派遣先と社員、そしてルネサンスという会社にとって、非常にメリットのある制度だと思います」
現在ルネサンスでは、全国17の自治体に社員を派遣しています。派遣された社員は、定期的にミーティングを開いて情報交換を行い、社内に対して自分たちの取り組み内容を積極的に発信しています。
「事業開発型社外留学制度や地域活性化起業人の活用で目指すのは、新規事業の探索と人材の開発です。派遣先に喜んでもらうのと同時に、派遣した社員の成長を促し、その社員が帰ってきたときにまた次のアクションにつなげてもらう。そんな体制づくりを進めています。従来の健康づくりの概念を飛び越え、さまざまな企業や団体と連携して、日本全国を元気にしていきたいですね」
～おわりに～
ルネサンスでは健康を軸に、地域や企業などが抱えるさまざまな課題の解決を目指しています。すべての人々が心身ともに健康であることを目指し、従業員、お客様、そして地域とのつながりを大切にした取り組みを通じて、サステナブルな社会づくりに貢献していきます。
ルネサンスのサステナビリティ
記事監修
- 株式会社ルネサンス
地域健康推進部 事業サポートチーム
課長 矢野傑 - スポーツクラブのフィットネスセクションの運営責任者を経て、国の制度を活用したまちの健康づくり（地域活性化起業人）に携わる。現在は、自治体に対する企画提案や新規事業の創出を担当している。
