ちゃんと寝ていてもすっきりしない
―睡眠の質を改善する方法

睡眠時間は足りているはずなのに、寝不足のように感じる、いまひとつ疲れが取れない…そう感じる原因のひとつとして、「睡眠の質が低い」ことが考えられます。長時間眠れていたとしても、日々の何気ない生活習慣や寝るときの環境が、睡眠中に思わぬストレスの原因となり、眠りの質を下げてしまっている可能性があるのです。そこで今回は、睡眠の質を低下させる寝方や生活習慣、眠りの質を高める方法についてご紹介します。

睡眠の質を下げる寝方や生活習慣って?

睡眠の質には、日中の過ごし方や寝る前の習慣などが大きく関係します。ここでは、睡眠の質を特に低下させやすい、7つの原因を見ていきましょう。

1)寝る直前までスマートフォンを見ている

寝る直前までスマートフォンやタブレットを長時間眺めてしまう…という方も多いのではないでしょうか。スマートフォンなどの液晶画面から発せられるブルーライトは、睡眠誘発ホルモン「メラトニン」の分泌を妨げてしまいます。そのため、寝付きにくくなったり眠りが浅くなったりする原因となるのです。

就寝1時間前になったらスマートフォンなどを見ないよう習慣付けることが一番ですが、それが難しいのであればせめて液晶画面にブルーライトカットフィルムを貼っておくなど、できるだけブルーライトを目に入れないようにしましょう。

2)夜に激しい運動をしている

寝る前に体を動かすと疲労でよく眠れるという考え方もあります。しかし、体温が上がってしまうほどの激しい運動をすると、体温が下がるまで時間がかかり、入眠の妨げとなってしまうため注意しましょう。

さらに、運動によって交感神経が刺激されると、リラックスモードを司る副交感神経への切り替えがスムーズにいかなくなることもあります。

3)夕方以降にうたた寝をしている

帰宅中の電車内や夕食後のリラックスタイムなどに、ついうたた寝をしてしまっていませんか?夕方以降のうたた寝や仮眠は、疲労解消にはわずかに効果がありますが、再び疲れが蓄積されるまで寝付きにくくなってしまいます。そのため、夕方以降はうたた寝をがまんしたほうが、夜の深い眠りに効果的。

どうしても眠くなってしまう場合は、昼食後などに短時間、昼寝をするのがおすすめです。昼間に一度疲労を解消しておくことで、夜の就寝時間に眠気のピークを合わせることができるでしょう。

4)イライラ状態で布団に入っている

ストレスや心配事を抱えた体は緊張状態にあり、交感神経が優位となっています。そのため、イライラや不安を抱えたまま布団に入っても、なかなか睡眠モードに切り替えることはできません。スムーズに入眠するためには心身がリラックスした状態となり、副交感神経を優位にする必要があります。

5)寝酒をしている

寝る直前のアルコールはリラックスできて寝付きもいい、というのは誤りです。体内に入ったアルコールは、交感神経を刺激するアセトアルデヒドに分解されます。その結果、熟睡できなくなってしまうのです。

また、覚醒作用を持つカフェインの摂取も夜は避けたほうがいいでしょう。カフェインを含むコーヒーや紅茶、緑茶、栄養ドリンクなども、お酒と同様に入眠や深い眠りを阻害してしまいます。

6)寝室が汚い

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寝室の衛生面は眠りの質に関係しています。特に空気のきれいさは重要で、換気をせずに湿気がこもっているような寝室は、カビやダニが増殖する原因にもなるため要注意です。睡眠中にカビやダニなどを吸い込むと、咳やくしゃみで起きてしまうだけでなく、吸い込んだ異物を体が排除しようとするため、眠りが浅くなってしまうのです。

7)自分に適した睡眠時間で寝られていない

今の睡眠時間が、自分にとってベストではないという可能性もあります。「ショートスリーパー」や「ロングスリーパー」という言葉があるように、適切な睡眠時間は一人ひとり異なるといわれているのです。

適切な睡眠時間は年齢や体調によっても変わってくるため、感覚だけですぐに把握するのは難しいでしょう。睡眠時間に対する満足度の高さを振り返り、質の高い睡眠が十分にとれているかどうかを確認してみることも大切です。

睡眠の質を改善するために
知っておきたい5つの方法

深く快適な眠りにするためには、ここまでご紹介した睡眠の質を下げてしまう生活習慣や睡眠環境を改善していくことが必要となります。ここからは、睡眠の質を高めるために実践したい5つの方法を見ていきましょう。

1)就寝3時間前には夕食を済ませる

食事してすぐに寝てしまうと、体内では消化活動が優先され、内臓が休息する時間が短くなります。それを避けるためには就寝時までに体内で消化活動が終わっている状態にして、寝ているあいだは内臓をしっかり休めることが理想です。

食物が消化されるまでにはおよそ3時間かかるとされているため、夕食は就寝3時間前までに済ませておきましょう。また、脂肪分が多いほど消化には時間がかかります。どうしても食事から就寝までの時間が短くなってしまう場合は、脂質が少なくて消化のいいものを、ボリュームを抑えて食べることがおすすめです。

2)入浴はぬるめのお湯にゆったり入る

入浴は就寝1時間前がベスト。入浴によって体の内部の温度が上がり、風呂からあがって急激に体温が下がることで、早く入眠モードに切り替えられます。この温度を下げるためには約1時間かかるため、1時間前の入浴が推奨されているのです。

また、熱いお湯に長時間入ってしまうと体が覚醒しやすくなり、入眠モードに切り替えるための体温変化が得られにくくなってしまいます。お湯は38度程度とぬるめに設定し、5~30分ほどつかります。じっくりと温まるとリラックス効果も得られ、よりスムーズに入眠できるでしょう。

3)日中の適度な運動

寝る前の激しい運動は禁物ですが、日中の適度な運動はおすすめです。習慣化することで生活のリズムが整い、自然な眠気からの深い眠りが期待できます。逆に、体を動かしすぎて興奮状態になると眠れなくなってしまうため、運動量は生活リズムに合わせて調整することがポイント。

また、日中の運動が難しい場合は、夕方~20時ごろまでに、20分〜1時間程度のウォーキングなど軽めの有酸素運動をすることがおすすめです。

4)就寝前に温かい飲み物をとる

寝る前に温かい飲み物をとると、体が内臓から温まり、体温が下がり始めるときに自然な眠気が得られます。特に、白湯や生湯、カモミールティーなどがおすすめ。また、夜だけでなく夕方ごろからノンカフェインのものだけを飲むようにすることで、より安眠効果が期待できます。

5)飲酒する場合のポイント

寝酒は避けたほうがいいですが、適量のお酒を就寝3時間前までに飲むのであれば、アルコールのリラックス効果を有効活用して眠りにつくことができます。

体内で分解されるまでに3時間かかるアルコールの摂取量は20g。これは成人男性の場合「日本酒1合」または「ビール中瓶1本」程度で、女性や高齢者の場合はその半分が目安とされています。

アプリで睡眠管理をしてみよう

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睡眠の質を高めるために、アプリで睡眠管理をしてみるのもおすすめ。睡眠サイクルを計測し、その人の眠りが浅いタイミングで起こしてくれるもの、睡眠時間やそのサイクルを計測するだけでなく、カフェインやアルコールといった睡眠に影響を与える飲食物の記録ができるアプリも多くあります。

体調や睡眠の満足感と照らし合わせて記録していくことで、適切な睡眠時間の把握にもつながり、睡眠の質を高めることに役立てられるでしょう。

~おわりに~
毎日寝る前に何気なく行っている習慣が、実は睡眠の妨げになっていることは珍しくありません。睡眠の質を高めることで体調が整うだけでなく、毎日の生活にメリハリがつき、よりパフォーマンスの高い仕事ができるなど充実した1日を過ごせるでしょう。ここでご紹介した良質な睡眠を得るための習慣を参考に、自分の睡眠を振り返ってみてはいかがでしょうか。