股関節の痛みに!理学療法士考案の寝ながらストレッチ&トレーニング

久しぶりにウォーキングやランニングをしたら、股関節に痛みを感じた方がいるかもしれません。硬くなっていた身体を急に動かしたことで感じる股関節の痛み。そんな痛みを解消するにはどうすればよいのでしょうか。

そこで、ルネサンスで働く理学療法士に、股関節に痛みが出る原因や痛みを繰り返さないための対策を聞きました。「動作の専門家」とも呼ばれる理学療法士が教える、寝ながら簡単にできる股関節のストレッチとトレーニングを紹介します。

教えてくれたヒト

アクティブエイジング部 理学療法士
藤本裕汰
理学療法士として病院に勤務後、ルネサンスに転職。「ルネサンス リハビリステーション戸塚」で訪問看護を担当する。「訪問看護は長いスパンでご利用者様と関われるので、少しずつでもできることが増えているのが実感できます。2年かけて麻痺していた手でお茶碗が持てるようになるなど、ご利用者様が目標を達成されたときにやりがいを感じます」

股関節とは?役割・場所・痛みの原因を理学療法士が解説

理学療法士の藤本に、股関節の役割や場所、痛みの原因について聞きました。股関節の痛みが気になる方は、まずは痛みの原因を知ることからはじめましょう。

――股関節とは身体のどの部分で、どのような役割があるのでしょうか。

「股関節は、骨盤というお腹まわりにある骨と大腿骨という太ももの骨をつなぐ関節のことです。骨盤側のお椀形になっている部分に、大腿骨の先端のボール形の部分がカポッとはまっているような形をしています。股関節は上半身と下半身をつないでいるので、体重を支えるという大きな役割があります。また、股関節が動くことで足を上げる、伸ばすという動作を行えるので、歩く上でとても大事な関節といえます」

――「股関節が硬い、やわらかい」という表現を聞きますが、股関節がスムーズに動くかどうかという意味なのでしょうか。

「股関節のまわりにある筋肉が硬いと、股関節が動きにくくなります。ですから、股関節がやわらかいというのは、股関節の可動域が広いという意味に加えて、股関節まわりの筋肉がやわらかいという意味もあると思います」

――久しぶりにウォーキングやランニングをすると股関節に痛みを感じるのは、なにが原因なのでしょうか。

「痛みの原因は人によって異なりますが、歩くときには股関節をグッと後ろに動かせることが大事。そうすると歩幅が大きくなるし、股関節を後ろに動かすことで足がポンッと前に出る作用があるので、筋力をあまり使わずに歩くことができます。逆にそれができないと、筋力だけで足を持ち上げなければいけないので、筋肉の負担が大きくなり、痛みが出る場合があります」

――ひと口に「股関節が痛い」といっても、実は「股関節を動かすための筋肉が痛い」ことも多いのですね。

「疾患による痛みではなく、ちょっと股関節が痛むくらいであれば、関節というより筋肉の痛みである場合が多いと思います。筋肉痛のような状態。そのため、股関節の痛みをとるためには、股関節まわりの筋肉をしっかりと使っていくことが大切。筋肉を柔軟に使うことで、股関節の可動域を広げることができるのです。また、歩くときに使ってほしい筋肉がサボってしまうと、ほかの筋肉ががんばりすぎて股関節に痛みが出る場合もあります。股関節まわりの筋肉の柔軟性を上げること、歩くときに使ってほしい筋肉が使えること、その2つが大切です」

股関節まわりの筋肉の柔軟性向上や可動域を広げる「寝ながらストレッチ」

股関節の痛みを予防するためには、股関節まわりの筋肉の柔軟性向上が必要です。そこで、股関節まわりの筋肉に効果的なストレッチを教えてもらいました。すべて寝ながらできる簡単なストレッチなので、寝る前など、すきま時間に実践してみましょう。

寝ながらストレッチ1:太ももの前側(大腿直筋)のストレッチ

大腿直筋は、股関節から膝関節にかけて位置し、太ももの前面中央にある筋肉です。この筋肉は、ひざを真っ直ぐに伸ばす動作など、歩行やバランスを保つのに重要な役割を果たします。

1. うつ伏せになる。

2. 右手で右足首を持って、15~30秒キープする。太ももの前側を伸ばすイメージで。同様に、左手で左足首を持って、15~30秒キープ。2~3セット行う。

・注意したいポイント
手で足首を持つのが難しい場合は、ひざを曲げるだけでもOK。無理をして足首を持とうとして、身体を反らせてしまうのではなく、お腹を床につけたまま行うようにしましょう。
腰に痛みがある場合はバスタオルをお腹の下に丸めて入れることで股関節が伸びやすくなります。

寝ながらストレッチ2:太ももの付け根(腸腰筋)のストレッチ

太ももの付け根に痛みがある方には、腸腰筋のストレッチがおすすめです。腸腰筋は、腹部から太ももの内側まで伸びており、おもに足を持ち上げる動作に関与します。この筋肉の柔軟性が低いと、股関節まわりに負担がかかり痛みや不快感を引き起こす可能性があります。

1. うつ伏せになったら、両手をお腹の下に入れて、こぶしを作る。こぶしは、骨盤の上側(ウエストに手を置いたときにふれる骨)とヘソの中間に置く。

2. こぶしを身体の下に入れたまま、身体を左右にゆらす。それを30秒続ける。こぶしに体重をかけ、おへその斜め下をほぐしていくイメージで。1回30秒を1セットとして、2~3セット行う。

・注意したいポイント
こぶしの位置が下側になりすぎないように注意。鼠径(そけい)部には、血管や神経が走行しているため、痛みを伴う可能性があります。

寝ながらストレッチ3:太ももの外側(大腿筋膜張筋)のストレッチ

太もも外側の腸脛靭帯(ちょうけいじんたい)も痛みを感じやすい部分。この痛みを軽減するためには、大腿筋膜張筋(だいたいきんまくちょうきん)のストレッチが効果的です。この筋肉は、太ももの外側を通ってひざのあたりまで伸びる筋肉で、特に歩行やランニングなどの活動時に、ひざや骨盤の安定に重要な役割を果たします。

1. 左側を下にして横向きに寝る。両手は合わせて前方に伸ばしておく。

2. 左足のひざを曲げる。ひざを曲げる角度は、90度を目安にできる範囲でOK。ストレッチの最中に曲げたひざが伸びてしまう方は、右手でひざを固定して行うことをおすすめします。

3. 右足を後ろへ反らし、かかとは浮かせず、床につけたまま15~30秒キープ。右太ももの外側が伸びていることを感じて。左右を入れ替えて、左右それぞれ15~30秒キープ。これを1セットとして、2~3セット行う。

・注意したいポイント
上側の足を後ろに反らそうと意識しすぎて、骨盤が上向きに開いてしまわないように注意。おへそを身体の正面に向けて、骨盤を前向きのままでキープしましょう。

股関節まわりの筋肉を鍛える「寝ながらトレーニング」

股関節の痛みを予防するためには、痛みの原因となることがある股関節まわりの筋肉を鍛えることが重要です。寝ながらできる簡単なトレーニングを教えてもらいました。ストレッチと合わせてぜひ寝る前に実践してみてください。

寝ながらトレーニング1:お尻(大臀筋)のトレーニング

お尻の筋肉(大臀筋)が弱いと、歩くときに太もも前側の筋肉(大臀直筋)が代わりに働いてしまい、骨盤の痛みにつながります。大臀筋と腹筋に効くトレーニングを行うことで、骨盤の痛みを防ぎましょう。

1. あお向けに寝て、両ひざを軽く曲げる。

2. 手のひらが床につくように、両手を腰の下に入れる。

3. 手のひらをつぶすようなイメージで背中を床にグッと押し込み、腰を丸めておへそを顔に向けるように小さく腰を上げる。それを10回繰り返す。10回を1セットとして、2~3セット行う。

・注意したいポイント
写真のように腰が浮いてしまうと、お尻の筋肉よりも腰の筋肉を使ってしまい、お尻の筋肉を鍛えにくくなってしまいます。そのため、手と背中を離さないようにして、背中を反らしすぎないように注意しましょう。

寝ながらトレーニング2:お尻の横(中臀筋)のトレーニング

お尻の横の筋肉(中殿筋)が弱いと、太ももの外側(大腿筋膜張筋)が張りやすくなります。太ももの外側に痛みを感じる人は、中臀筋を鍛えるトレーニングを行うとよいでしょう。

1. 左を下にして横向きに寝る。股関節を45度、両ひざを45度にくの字に曲げる。手は楽な位置に置く。ヘソを正面に向けたまま、右ひざを開き、お尻の横をきゅっと縮めるイメージでパカパカ上げ下げする。

2. 1の動きを10回繰り返す。左右を入れ替え、行う。左右10回ずつを1セットとして、2~3セット行う。

お尻の筋肉が意識しづらい方は、骨盤に手を沿えることで中殿筋の動きが分かりやすくなります。

身体が安定しづらい方は、上の手で床を押しながら行うとよいでしょう。

・注意したいポイント
腰の筋肉を痛めないために、写真のように骨盤が上向きにならない(おへそが上に向かない)ように注意してください。

トレーニング番外編:ふくらはぎ(下腿三頭筋)のトレーニング

一見関係のないように感じる股関節とふくらはぎですが、股関節を前に出す力とふくらはぎの力はお互いを補い合う関係にあります。ふくらはぎを鍛えることで、股関節の負担を軽くすることができます。
ここからは番外編として、立って簡単にできるトレーニングを紹介します。

1. 軽くひじが曲がるくらいの距離で壁の前に立ち、両手を壁につく。

2. そのまま、かかとを上げ下げする。10回繰り返す。かかとは上がるところまででOK。10回を1セットとして、2~3セット行う。

・注意したいポイント
お腹が前に出てしまったり、写真のように身体が前に倒れてしまったりしないように注意。頭が天井にひっぱられるようなイメージで身体をまっすぐ持ち上げましょう。

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日常生活での対策・注意点やジムでの運動のおすすめ

――柔軟な股関節を維持するために、日常生活で気をつけるべきことはあるのでしょうか。

「私が見ている中で一番動かすことが難しくなりやすいのが、足を後ろに伸ばす動きです。例えば、ずっと座っていると、股関節が曲がりっぱなしになるので、まわりの筋肉も曲がったまま硬くなってしまいます。そうすると、筋肉が伸びにくくなってしまうので、デスクワークが多い方は適度に姿勢を変えたり、時々立って身体を伸ばしたりするように心掛けてください。1時間に1回立つくらいでいいので、同じ姿勢を取りすぎないようにしましょう」

――ウォーキングを行うときに股関節に負担をかけないためには、しっかりとストレッチすることがポイントなんですよね。

「歩くフォームにもポイントはあるのですが、まずはフォームを気にせず、しっかりとストレッチをしてから歩いてみてください。それから、ウォーキングに適した靴を履くことも大切。かかとがホールドされていて、靴底の足指の付け根部分がよく曲がるものがおすすめです。かかとが固定されると身体がブレにくくなり、靴底が曲がると足がしっかりと踏みかえせるので、股関節の負担軽減につながります」

――ストレッチと同様に「正しいフォームで運動を行う」ことも大切と聞きました。

「「運動をすると痛みが出るということは、その部分を無理に使っている証拠。その場合は負荷を少なくしても、正しいフォームで行うことが重要です。ジムなどでトレーナーにフォームを確認してもらうのもよいですね。ジムで行うなら、プールでの横歩きやランニングマシンで歩くことがおすすめです。歩くと股関節には体重の3~4倍の負荷がかかるともいわれているので、プールならその負担を軽減することができます。横歩きをすると、先程紹介したお尻の横(中臀筋)のトレーニングと同様の効果を得られますよ」
関連記事: 水泳は筋トレと組み合わせれば効果大!全身引き締めにおすすめの方法

~おわりに~
股関節の痛みを予防するためには、股関節まわりの筋肉の柔軟性を向上させることが大切です。藤本の考案する簡単なストレッチやトレーニングで、痛みの改善が期待できます。年齢を重ねても自分の足で歩くことを目指して、股関節まわりの筋力をアップさせ、股関節の可動域を広げていきましょう。
また、股関節の負担を軽減するには、正しいフォームで運動を行うことも重要なポイント。そのためには、ジムでトレーナーに指導してもらうのがおすすめです。股関節をやわらかくするためにも、ジムでのトレーニングをはじめてみてはいかがでしょうか。
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